チセさんに連絡してキャリーを持ってきてもらって

 リオ・オリンピックで沸き立っていた去年の8月15日のこと。夏休み中だった大学1年生の哲さんは、銀行の前の舗道を通りかかり、人垣ができているのに出くわした。熱いアスファルトの上には、目を背けたくなるような生き物が転がっていた。ガリガリに痩せてあばら骨が浮き出し、全身は象皮状のかさぶたで覆われ、目も鼻もつぶれた猫だった。最後の力をふりしぼって「にゃあおん~~(助けて)」と、見えない人間たちに向かって救いを求めている。哲(てつ)さんは落ち合う予定だった母親の裕子さんに携帯で連絡した。

http://www.sharedmemo.com/rtgruiy/ http://ja.mangareborn.jp/users/14656 「行き倒れの猫がいる。チセさんに連絡してキャリーを持ってきてもらって」

 チセさんは同じマンションに住む、裕子(ゆうこ)さんの友人だ。飛んできたチセさんは猫に触れたときの、ガチガチの石のような哀しい感触を今も忘れない。

http://www.nyan-wan.com/users/view/279 http://www.rokyu.net/user_information1-58810.html すぐさま、動物病院へ。猫は、ヒゼンダニが皮膚の下に巣くって繁殖し続ける「疥癬(かいせん)」という皮膚病の末期だった。脱水症状を起こしていて、まさに衰弱死寸前だった。疥癬は、液薬投与や飲み薬などの手当てをしっかりすれば、快方に向かう。だが、かさぶたでも伝染するので、他の猫との完全隔離が必要だ。